腫瘍マーカーをご存じですか?
腫瘍マーカーをご存じですか?
男性の中高年層であれば、PSA(ピーエスエー)という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。PSAは前立腺がんの腫瘍マーカーになります。
具体的にはPSAの値が、4ng/mLを超えると前立腺がんの発見される確率が高くなります。(高くなりますが、必ず前立腺がんが見つかるわけではありません)
このように、ある値が高いことを確認することでがんの存在を疑う、または治療を受けた方ではがんの再発を疑うきっかけとなります。
こう聞くと、「あ、それは非常に便利だな!自分も検査してみたい!!」と多くの方が自分自身も受けてみたいと思うのではないでしょうか。好きでバリウム検査や内視鏡検査をする方はいないと思います。血液を少しとってそれでがんがあるのか無いのかわかるのであればこんな便利なことはありません。
だけど・・・、話はそんなに簡単ではありません。
私は大学やがんセンターでがんのマーカーを探す研究を長年行ってきました。
幸い、それなりの結果も得られ、マスコミにも取り上げて頂いたり、指導していた大学院生が大きな学会で賞を頂いたりもしました。
だけど・・・、「腫瘍マーカーでいろいろながんが発見できますか?」と聞かれましたら、「No!」と答えざるを得ません。
前述のPSAは特別優秀な腫瘍マーカーと言えます。
過去の大規模な臨床試験でもその有用性が示され、現在では検診でも使用される唯一の腫瘍マーカーです。PSAが4~10ng/mLの場合、15~30%の人に前立腺がんが見つかることがわかっています。10ng/mLを超えると約50%の人にがんが見つかるとされています。言い換えると、10ng/mLを超えていてもがんが見つからない場合があるわけです。
腫瘍マーカーの中でもエリートとされるPSAでさえ、このような結果になります。それでもやはり、PSAは非常に優秀な腫瘍マーカーと言えます。ですから、「受けた方がいいですか?」と聞かれた場合は「Yes!」と答えるべきです。
がんを確実に治すためには、早期に発見する必要があります。現在、腫瘍マーカーはがんの早期発見にはほぼ役に立たないと考えられています。なぜなら、腫瘍マーカーが上昇する場合の多くは、がんが進行しているためです。
では、多くの腫瘍マーカーが存在し、一部が保険で検査が認められている理由は何でしょうか?それは、特に進行がんの患者さんの治療において、がんの勢いを予測できることがあるからです。
例えば、胃がんではCEAやCA19-9という腫瘍マーカーが保険で検査を行うことが認められています。治療前にCEAが50ng/mLだったとして、治療後に5ng/mLまで下がった場合、治療の効果があったことが確認できます。治療後に定期的に検査をおこなうのが一般的ですが、どこかの時点でまたCEAが5ng/mLを超えてくると再発が疑わしいということになります。(あくまでも疑いです)
このように、治療中や治療後に腫瘍マーカーを測定することで、がんの勢いを確認することができます。
腫瘍マーカーが有用かどうかという質問に対しては、「Yes!」と答えられます。
ただし、繰り返しですが、がんが確実に治る段階で見つけたいと考えた場合は、内視鏡などの検査がやはり必要ということになります。
今回は、腫瘍マーカーについて、一般的な知識の概要をお伝えしました。今後また、腫瘍マーカーについてもう少し詳しくお話しできる機会を頂ければと思います。
2023年5月7日
きらりクリニック習志野台中央
院長 星野 敢