甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症とは
甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう、英: hypothyroidism)とは、甲状腺ホルモンの分泌が不十分なために代謝が低下し、身体の機能が低下する病気です。甲状腺ホルモンは、基礎代謝量を調節するために必要不可欠なホルモンであり、不足すると体内の代謝が低下します。甲状腺機能低下症は、先天性や後天性、一時的なものや持続的なものなど、さまざまな原因によって引き起こされる場合があります。
甲状腺機能低下症の症状は、以下のようなものがあります。
- 疲れやすい、倦怠感がある
- 冷え性で寒がりになる
- 便秘がちになる
- 体重が増加する
- 皮膚が乾燥してカサカサする
- 髪の毛が薄くなる、抜け毛が増える
- 声が低くなる、話し方がゆっくりになる
- 眼の周りがむくむことがある
- 月経不順や不妊症になることがある
これらの症状がある場合には、甲状腺機能低下症が疑われるため、早期に医師の診断を受けることが重要です。
甲状腺機能低下症の定義
甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの分泌が不足することにより、身体の代謝機能が低下する病気です。甲状腺ホルモンは、エネルギーの代謝や成長、発達に関わる重要な役割を持っており、不足することで体調不良やさまざまな症状が現れます。甲状腺機能低下症は、一般的に「低下症」と略されることもあります。
甲状腺機能低下症の検査法には、以下のようなものがあります。
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血液検査:甲状腺機能低下症では、TSH(甲状腺刺激ホルモン)の値が高くなる傾向があります。また、血液中の甲状腺ホルモン(T4、T3)の値も低下します。
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超音波検査:甲状腺の大きさや形状を調べるために、超音波検査が行われることがあります。甲状腺機能低下症では、甲状腺の大きさが大きくなることがあります。
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ヨード吸収試験:甲状腺機能低下症の原因となる自己免疫疾患に対する検査として、ヨード吸収試験が行われることがあります。この検査では、放射性ヨウ素を摂取して、甲状腺が放射性ヨウ素をどの程度吸収するかを測定します。
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CTやMRIなどの画像診断:甲状腺の詳細な形状や内部の状態を調べるために、CTやMRIなどの画像診断が行われることがあります。ただし、一般的には血液検査や超音波検査で十分な診断ができるため、超音波、CTやMRIは必要に応じて行われることが多いです。当院でも超音波検査は適宜施行可能です。
甲状腺機能低下症の原因
甲状腺機能低下症の主な原因は、甲状腺ホルモンの産生不足によるものです。甲状腺ホルモンは、体内の細胞の代謝や成長、発育、体温調節などの機能に重要な役割を果たしています。甲状腺ホルモンの産生不足には以下のような原因が考えられます。
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自己免疫疾患:自己免疫疾患であるハッシュモト甲状腺炎は、甲状腺組織に対する免疫反応によって甲状腺機能低下症を引き起こすことがあります。
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甲状腺摘出術:甲状腺が一部または全て切除された場合に、甲状腺ホルモンの産生が不足することがあります。
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放射線治療:頸部や胸部などに放射線治療を受けた場合、甲状腺組織にダメージが生じて甲状腺機能低下症を引き起こすことがあります。
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薬物:一部の薬物(例えば、抗不整脈薬や甲状腺機能亢進症の治療に用いる薬物)や栄養素の過剰摂取(例えば、ヨウ素)によって、甲状腺ホルモンの産生が抑制されることがあります。
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先天性甲状腺機能低下症:胎児期から甲状腺ホルモンの産生が不足している場合に生じる甲状腺機能低下症です。
甲状腺機能低下症の治療法
甲状腺機能低下症の治療法は、甲状腺ホルモン補充療法が中心です。甲状腺ホルモンは、甲状腺が正常に機能していない場合に不足するため、補充することで症状を改善することができます。
甲状腺ホルモン補充療法には、以下のような種類があります。
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レボチロキシンナトリウム(チラージンSなど):T4を補充する薬で、1日1回経口投与されます。効果は遅く、服用後数週間から1ヶ月程度で効果が現れます。
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リオチロニンナトリウム(チロナミンなど):T3を補充する薬で、レボチロキシンに比べ効果が早く、効果が短いため1日2~3回経口投与されます。
甲状腺ホルモン補充療法の開始時には、医師の指示に従って徐々に投与量を増やしていくことが一般的です。治療の進捗に応じて、定期的に血液検査を行い、甲状腺ホルモンの血中濃度を調整していきます。治療の成功には、定期的な通院と適切な投薬が不可欠です。
甲状腺機能低下症の治療薬の種類
甲状腺機能低下症の治療には、甲状腺ホルモン補充療法が一般的に用いられます。具体的には以下のような種類があります。
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レボチロキシンナトリウム(チラージンSなど):人工的に作られたT4(甲状腺ホルモンの一種)で、甲状腺ホルモン補充療法によく使われます。
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リオチロニンナトリウム(チロナミンなど):T3(甲状腺ホルモンの一種)の人工的な形で、甲状腺機能低下症の治療に使われます。ただし、効果が強いため、使用には注意が必要です。
これらの薬剤は、甲状腺機能低下症の原因によって選択される場合があります。たとえば、原因が甲状腺の自己免疫疾患である場合は、一般的にL-チロキシンが選択されます。また、甲状腺手術などで甲状腺の一部または全部が切除された場合には、L-チロキシンの投与が必要になることがあります。治療には定期的な血液検査などのフォローアップが必要であり、医師の指導のもとで行う必要があります。