逆流性食道炎
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎とは、胃の酸や消化液が食道に逆流して炎症を引き起こす疾患のことです。逆流性食道炎は、胃酸の逆流により、食道の上部にある括約筋が弱くなり、食道の内壁に刺激を与えることで発生します。逆流性食道炎は、胸や腹部の痛み、胸焼け、咳、のどの痛みなどの症状を引き起こすことがあります。長期間放置すると、食道が狭くなったり、食道癌のリスクを増加させることがあります。
逆流性食道炎の定義
逆流性食道炎とは、胃酸が食道に逆流し、食道の粘膜を刺激して炎症を引き起こす疾患のことです。一般的に、食道の下部に位置する括約筋が正常に機能しなくなることによって、胃酸が逆流することが原因とされています。炎症の程度によって、単純な炎症から食道の組織が傷つくことで生じる潰瘍を合併した逆流性食道炎、あるいは食道ががん化する前がん状態であるバレット食道などの病態が存在します。
逆流性食道炎の検査法には、以下のようなものがあります。
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上部消化管内視鏡検査:胃や食道の内部を観察し、逆流性食道炎の有無や進行度合いを確認するために行われます。
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24時間食道内pHモニター検査:食道内の酸性度を測定し、逆流の頻度や程度を評価するために行われます。
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バリウム食道造影検査:バリウム液を飲み、レントゲン撮影を行い、食道の形状や逆流の有無を調べるために行われます。
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食道マノメトリー検査:食道の収縮力や括約筋の機能を測定し、逆流性食道炎の原因となる食道の運動異常を調べるために行われます。
これらの検査法は、それぞれ特有のメリットやデメリットがあります。医師は患者の症状や病歴を考慮しながら、最適な検査法を選択します。
逆流性食道炎の原因
逆流性食道炎の主な原因は、胃酸や胃液が食道に逆流することにより、食道の粘膜が炎症を起こすことです。この逆流が起こる原因は、以下のようなものが考えられます。
- 食道と胃の閉鎖機能の低下
- 食道と胃の間の括約筋が正常に閉まらない
- 食道と胃の間の括約筋が弱くなる(例:高齢者)
- 食道粘膜の弱さ
- 食道の粘膜が弱く、胃酸により容易に損傷を受ける(例:喫煙者)
- 食道周囲の状態の変化
- 食道周囲の組織の腫れや圧迫(例:妊婦)
- 胸郭内圧の上昇(例:肥満者)
- 食生活
- 食事中に胃が膨らむことで胃酸が逆流しやすくなる(例:大量の炭酸飲料の摂取)
- 脂っこい食事やスパイスの多い食事が、胃酸分泌を促進する
以上のような要因があることが、逆流性食道炎の原因になることが知られています。
逆流性食道炎の予防法
逆流性食道炎の予防法は、主に以下の点に注意することが挙げられます。
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食事の改善:胃酸の過剰分泌を抑えるために、食事内容を改善することが重要です。過度の脂肪やスパイス、酸味の強い食品を避け、食物繊維が豊富な野菜や果物、発酵食品、優良なタンパク質源(魚、豆、脂肪の少ない肉)を積極的に摂取するように心がけましょう。また、食事の際にはゆっくりと噛んで、よく噛んで飲み込むようにすると良いでしょう。
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飲酒や喫煙を避ける:アルコールやタバコは、胃酸分泌を増加させるため、逆流性食道炎を悪化させる可能性があります。
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食事後の姿勢を改善する:食後の横になったり、寝転がったりすることを避け、できるだけ立ち上がって歩いたり、軽い運動を行ったりすることが良いとされています。また、寝るときは頭を高くすることで胃酸が逆流しにくくなります。
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適度な運動を行う:適度な運動は胃腸の動きを活発にし、消化器官の働きを正常化するため、逆流性食道炎の予防にもつながります。
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ストレスを減らす:ストレスは胃酸の分泌を増加させるため、逆流性食道炎を悪化させる可能性があります。ストレスを感じたときには、深呼吸やリラックスするための時間を作るようにしましょう。
逆流性食道炎の症状が続く場合は、医師に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
逆流性食道炎の治療法
逆流性食道炎の治療法には、以下のようなものがあります。
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薬物療法:逆流性食道炎の軽度から中等度の症状を治療するためには、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬(PPI)や制酸薬などの薬剤が使われます。これらの薬剤は胃酸の分泌を抑制し、食道の炎症や潰瘍を治療します。また、アルギン酸ナトリウムとアンチヒスタミン薬の併用や、プロキネチック薬の使用も検討されます。
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生活習慣の改善:食事の内容や時間帯、食べ方、姿勢の改善が逆流性食道炎の改善に有効です。具体的には、食事中の水分摂取を控える、大量の食事を避ける、胃を圧迫する服を着用しない、就寝前に食事をしないなどの方法があります。また、喫煙、過剰な飲酒、ストレスなども逆流性食道炎の原因となるため、これらを改善することも大切です。
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手術療法:逆流性食道炎が重症化し、薬物療法や生活習慣の改善にも効果がない場合、手術療法が検討されます。手術には、Nissen法と呼ばれる方法が一般的で、食道の下部を胃の上部に巻きつけることで逆流を防止する方法です。最近では腹腔鏡下に低侵襲の手術が行われることが一般的です。ただし、手術はリスクがあるため、軽度から中等度の逆流性食道炎に対しては、薬物療法や生活習慣の改善を優先することが一般的です。