食道アカラシア
食道アカラシアとは
食道アカラシアは、食道の筋肉が正常に動かなくなることによって、食べ物や飲み物が胃にうまく送られず、喉の奥や胸のあたりに引っかかってしまう病気です。アカラシアはギリシャ語で「不開放」を意味し、食道が食べ物をうまく通すことができないことを表しています。この病気は、食道の筋肉を支配する神経系に異常があることが原因で発生すると考えられています。本邦では10万に1人程度の頻度で発症するといわれてきましたが、潜在的な発症率はもう少し高いと考えられています。
主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 嚥下(えんげ)困難
- 食後の胸やけや胃痛
- 飲み込み時の突然の咳や吐き気
- 飲み込みに時間がかかる感覚
- 体重減少や栄養不良
これらの症状が長期間続く場合は、早めの医療検査や治療が必要です。
食道アカラシアの定義
食道アカラシアとは、食道と胃の間にある筋肉の働きが損なわれ、食物が胃に正常に流れ込まなくなる疾患です。通常、食道の筋肉は食物を胃に送り込むために強く収縮しますが、食道アカラシアでは、筋肉の収縮力が弱くなっています。これにより、食道に食物が詰まりやすく、胸や背中の痛みや胸焼けなどの症状が現れます。
食道アカラシアの検査法は以下のようなものがあります。
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バリウム検査:患者はバリウム液を飲み、X線で撮影されます。この検査は、食道の拡張と収縮の運動を確認するために使用されます。アカラシアでは、食道の下部の筋肉が適切に動かないため、バリウムが食道の下部に停滞することがあります。
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上部消化管内視鏡検査:内視鏡を使用して、食道や胃の内部を観察します。食道の下部の筋肉が正常に動かない場合、内視鏡を使用して拡張を行うことができます。
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食道マノメトリー検査:食道に細いチューブを挿入し、食道の収縮の力や協調動作を測定します。この検査は、アカラシアの診断に必要な情報を提供します。
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pHモニタリング:食道内の酸性度を測定するために、小さなチューブを食道に挿入し、24時間の期間にわたって測定します。食道アカラシアの場合、食道の拡張が酸逆流を引き起こすことがあります。
これらの検査を組み合わせて、食道アカラシアの診断と重症度の評価を行うことができます。
食道アカラシアの原因
食道アカラシアの原因は、はっきりとは分かっていませんが、以下のような要因が関係していると考えられています。
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食道平滑筋の異常:食道は、下部食道括約筋と呼ばれる平滑筋で構成されており、食物を胃へ送るために収縮します。食道アカラシアの患者では、この平滑筋が正常に動かないため、食物が胃に送られず、食道内に留まってしまいます。
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神経障害:食道アカラシアの患者では、食道周辺の神経系に異常が見られることがあります。具体的には、食道周辺の神経細胞が減少することが報告されています。
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免疫系の異常:食道アカラシアの患者では、免疫系に異常が見られることがあります。具体的には、食道周辺の炎症が起こっていることが報告されています。
これらの要因が組み合わさって、食道アカラシアが引き起こされると考えられています。ただし、どのような原因が最も重要な役割を果たすかは不明です。
食道アカラシアの予防法
現在、食道アカラシアの予防法は確立されていません。ただし、食事や生活習慣の改善により、症状の改善や進行の遅延が期待できます。
具体的には、食事の際にゆっくりと噛むことや、食べる時間を十分に取ることが大切です。また、大量の飲料を一度に飲むことや、寝る前に食事をすることは避けるようにしましょう。適度な運動を習慣化することで、身体全体の健康状態を改善することも重要です。
また、喫煙やアルコールの過剰摂取は、食道アカラシアの症状を悪化させることがあるため、禁煙や飲酒量の減量も予防につながります。症状が出ている場合は早めに医師に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
食道アカラシアの治療法
食道アカラシアの治療法は、症状の軽減や合併症の予防が目的となります。治療法には以下のようなものがあります。
1.内科的治療
- 食道拡張療法:食道の狭窄部分を拡張するために、食道内視鏡を使って筋肉の束を切開したり、バルーンカテーテルを使って膨らませたりします。
- 薬物療法:抗コリン薬やCa拮抗薬を使用することで、食道と胃の筋肉の緊張を緩和することができます。一般的に効果は限定的なことが多いです。
- ボツリヌス菌毒素局注療法(本邦では保険未収載)
2.手術的治療
- ミオトミー術:食道拡張療法に反応がない場合や再発がある場合には、食道の筋肉を切開する手術を行います。一般的に加えてラッピングを加えたHeller-Dor手術を腹腔鏡下に行うことが多いです。
- 内視鏡下ミオトミー術(POEM:Per-Oral Endoscopic Myotomy):経口の内視鏡を用いて、食道内から食道の筋層を切開する方法もあります。
どの治療法が最適かは、症状や進行度合いによって異なります。専門医の指導のもと、適切な治療法を選択する必要があります。