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開業3年目を迎えて思うこと

[2025.12.30]

気づけば年の瀬です。遅ればせながらとなりますが、早いもので、2025年9月をもって当院も開院3年目に突入いたしました。
振り返れば、あっという間の2年間でした。

この間、多くの患者さんにお会いし、治療に携わらせていただき、さまざまなお話を伺う機会に恵まれました。
船橋市のはずれという立地ではありますが、船橋はもちろん、八千代市・習志野市にも近接していることから、他市、さらには他県からも多くの患者さんにご来院いただきました。「この地域の中心でありたい」という自分の思いが、少しずつ形になりつつあるように感じております。

開業医としては、まだまだよちよち歩きの段階です。
せめて患者さん一人ひとりに、自分の精一杯の力で向き合いたい——その思いで日々診療を続けてきたつもりです。
それでも、十分な診断や治療結果をお示しできなかった患者さんも多くいらっしゃったことと思います。

もともと勉強することは嫌いではありませんので、自分なりに毎日学びながら診療を続けてきました。自分で言うのも気が引けますが、開業してから「勉強をしないで一日を終えた日」は一日もありません。それでも医療は本当に難しく、毎日が一心不乱です。

がんセンターで診療を行っていた頃は、「がんを治す」ことだけを考えていたように思います。原則一人で年間60件を超える食道がんの手術を担当し、胃がんや大腸がんの手術では助手として携わりました。外来日以外はほとんど手術室に入り浸りで、どうすれば安全にがんを取り除けるか、再発の起きにくい治療ができるか、そのことばかりを考えていました。
結果として手術合併症も少なく、全国ランキングに掲載される施設となり、社会に対して一定の貢献ができたのではないかと振り返ります。

正直なところ、難しい手術をこなし、研究にも取り組んできた自分であれば、一開業医としての仕事も簡単とは言わないまでも「なんとかなるだろう」と、どこかで高をくくっていた部分があったと思います。
しかし、実際に開業してみての率直な感想は、「途方もなく大変」という一言に尽きます。

がんのような悪性新生物とは異なり(もちろん、がんの発生にも多くの要因が絡み合っていますが)、いわゆる“ common disease” と呼ばれる疾患は、さまざまな背景が複雑に影響し合っています。
患者さんの年齢、性別、体重、飲酒歴、喫煙歴、食生活、睡眠時間……。場合によっては職種や趣味なども重要な要因となります。

たとえば高血圧の患者さんに対して、薬を処方するだけでは、その後は薬を増やし続けるだけになってしまう可能性があります。体重が超過していれば減量を促し、塩分を好む食生活であれば改善をお願いし、喫煙されている方には禁煙を推奨する必要があります。
さらに、自宅での血圧測定も欠かせません。医療機関で測る血圧はどうしても高く出る傾向があるからです。個人的には、クリニックで測る血圧はほとんど意味をなさないとすら思っていますし、実際に世界各国の学会からも「家庭での血圧自己測定」が強く推奨されています。

とはいえ、これらを患者さんがすぐに受け入れられるかといえば、言うまでもなく簡単ではありません。
自分自身も聖人君子ではありませんし、食べたいときは食べますし、飲みたいときは飲みます(時に飲みすぎます…)。
それでも医師として、しつこく思われても、嫌われても、伝え続けなければならないのだと感じています。

薬を出すだけなら2〜3分で済みますが、こうしたやり取りにはその倍以上の時間がかかります。
しかし開業してからは、むしろその時間こそが開業医・かかりつけ医としての仕事の根幹なのだと考えるようになりました。

「かぜ」も簡単ではありません。「かぜに効く薬はない」とよく言われますが、そもそも「かぜ」と診断すること自体が難しい。私自身、「かぜって何ですか?」と伺いたくなることがあります。「かぜだと思っていた」と受診された方が、実は肺炎を起こしていたり、副鼻腔炎から中耳炎になっていたり、さらには結核だったり……。
「かぜぐらいで受診するな」と、医師の中にも言う人がいますが、私にはいまだに「かぜ」と「かぜでないもの」の区別が簡単にはつけられません。市販薬も大変よくできており、一時的に熱や症状が抑えられるため、重篤な症状が隠れてしまうこともあります。

診察をして、必要と判断した際には採血やレントゲン検査などを行うこともあります。結果として、幸いにして見落としを防げたケースは数え切れないほどあります。
そうなると、薬を処方するだけよりも診察時間が長くなるのは、どうしても避けられないことだと感じています。

また、「心」と「体」はどうしても切り離して考えることができません。「病は気から」という言葉があるように、さまざまな疾患やその症状の強弱が「心」の影響を受けることは間違いないように思います。英語にも “Fancy may kill or cure.(思い込みが病気を治すことも、悪化させることもある)” という表現があり、この認識は世界共通といえるでしょう。

「心」と「体」の関連性は「心身相関」と呼ばれ、医学的にもエビデンスが確立された、もはや常識となっている概念です。詳細は省きますが、消化器疾患では機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群などがよく知られています。また、実は気管支喘息、リウマチ、糖尿病といった誰もが知る疾患においても、「心身相関」の関与が明らかになっています。

つまり、多くの疾患で「心」と「体」の相互作用が示唆されており、その影響の割合は単純に数値化できるものではありません。そのため、私自身も心療内科的な診療について教科書的な学習を重ねるだけでなく、信頼できる複数の心療内科医・精神科医の先生方から日々助言をいただける体制を整えております。

脈絡のない話となってしまいましたが、地域の「かかりつけ医」を目指して開業し、3年目に入った今、これまでの経験から感じていることを述べさせていただきました。
開業医・かかりつけ医として学ぶべきこと、取り組むべきことは想像以上に多く、決して容易ではありません。「途方もなく大変」です。それでも、今の気持ちと体力が続く限り、この場所で診療を続けていきたいと考えております。もし、それを継続することが難しくなる時が来た際には、潔く閉院する覚悟も持ちながら、これからも日々の診療に向き合ってまいります。

今後とも当院をご愛顧いただけましたら幸いです。

 

きらりクリニック習志野台中央

院長 星野 敢

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